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【ロボット名鑑】「第4回 ロボット大賞」受賞ロボその1
大賞受賞「80W駆動の省エネロボット」(トヨタほか)

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既報の通り、11月25日に受賞ロボットが発表された、経済産業省と社団法人日本機械工業連合会が主催する「第4回 ロボット大賞」(記事はこちら)。26日には、日本科学未来館で表彰式が行われ、そして同日から同館で受賞ロボットの無料展示がスタートした(28日まで)。国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」のロボットアームはさすがに模型と映像とパネルでの展示となったが、そのほかはほぼ実機が展示され、多くがデモンストレーションを実施中だ。無料展示は、28日(日)まで行われる。今回から複数回にわたって、受賞したロボットたちを動画も交えて紹介する。

1本目は、第4回ロボット大賞を受賞した「安全・快適に人と協働できる80W駆動の省エネロボット(スペアタイヤ自動搭載ロボット)」(トヨタ自動車株式会社・株式会社オチアイネクサス・国立大学法人法人名古屋工業大学・公立大学法人首都大学東京)から。スペアタイヤをトランク内に自動搭載することを目的としたFA(産業用)ロボット(アーム)だ。トヨタ自動車の高岡工場のカローラ組立ラインに2010年01月より導入され、同年09月で累計10万台の車両のスペアタイヤを搭載した実績を持つ。水平回転で3軸、ピッチ回転で1軸を持ち、上昇・下降機構にはリンク機構を利用した構成となっている。大荷重の130kgにも対応可能な耐久性の高い構造や低慣性で応答性がよいことなども特徴だ。

大賞に選ばれた理由は、「人と協働できる安全なFAロボット」という点だ。FAロボットは大パワーのために通常、人とは隔離された安全策の内側など専用エリアで作業をしている。しかし、自動車工場などを例にとっても、人の手を必要とする作業がまだまだあり、それも力のいるものも多い。人のすぐそばで稼働する必要があるが、もちろん人と接触してもケガをさせないことは絶対条件であり、低出力でいながら重量物を運べる推力を持つのが、人と協働するロボットに求められる条件なのである。

従来のロボットの場合、推力の70~90%を自重を支えるのに使用しているという、実に無駄の多い機構になってしまっている。そのため、約25kgのスペアタイヤをトランク内に設置しようとすると、1500Wほどの推力が必要となってしまうのだ。もちろん、そんなパワーでアームを振り回したら、とても人と協働などは危険すぎてできない。

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 そこで、スペアタイヤ自動搭載ロボットでは、その無駄をなくすため、スプリングによる本体自重補償機構を搭載してモータとの「低出力ハイブリッド駆動技術」を開発し、モータの推力の大部分をスペアタイヤを動かすことに使えるようにしたのである。さらに平行リンク機構を組み込み(スプリングとチェーンで結合)、たった80Wという低出力ながら、110mm/sというラインスピードに対応できる速度と耐久性を確保しつつ、タイヤをトランク内にセットできるという性能を実現した。会場に用意されていた自重補償機構原理モデルでタイヤを動かしてみると、25kgという質量があるので、さすがに最初に動かす時は少し力が必要。しかし、一度動いてしまえば後は非常に楽で、これなら低出力で動かせるのも納得という具合であった。

また安全制御に関しては、「力センサレス柔軟制御」というシステムを採用した。従来の安全制御では、レーザセンサや力覚センサ、接触センサ、バンパスイッチなどを利用してきたのだが、死角をなくすためには多数を用いる必要があり、結果として高コストになるというデメリットを有する。さらに、力覚センサを用いての柔軟制御を行おうとする場合、衝突した際の指令位置と実際の位置の偏差が大きいと過大な力を発生させてしまうという恐れもあった。

そこで、駆動モータの電流と各駆動軸の速度センサから、ロボットの動力学モデルを用いて外力を推定し、仮装ベルトコンベアの特性に従ったモータ制御を行なうことで、ロボットのどの部分であると、何かに接触した際にそれを検知し、さらに偏差によらず一定の柔軟性を持たせることに成功したのが力センサレス柔軟制御というわけだ。接触時に発生する力を70N以下に抑えられるので、人が大して力を入れなくてもロボットアームの動きを簡単に停止させるのである。

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実際に会場で、名古屋工業大学と首都大学東京が共同開発した力センサレス柔軟制御の原理モデルを試してみたところ、驚くほど安全なのがわかった。アームのどの部分を触っても指1本で止められるのだ。しかも、普通なら止めてしまったことで機械に負荷がかかってしまいそうだが、そういう心配もないという。

 なお、人と協働できるFAロボットを用いることのメリットは、人がその場にいることでの改善が進みやすくなるという点がまずあるという。無人化したロボットエリアでロボットだけが作業していると、なかなか改善点を見出しにくいということである。また、世界でもトップの少子高齢化という状況に対応するのにも有効な手段となり得るという。ロボットが重量物の取り付けといった若い男性でも骨の折れる作業を担当してくれることで、女性や高齢者が工場で働ける環境を作りやすくなるというわけだ。そして、今回の80Wという低出力は省エネにも大きく寄与している点もポイントというわけである。

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